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【談話】 杉山文野氏の公益財団法人日本オリンピック委員会の理事選考が炙り出したもの

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【談話】

杉山文野氏の公益財団法人日本オリンピック委員会の理事選考が炙り出したもの

いま、LGBTプライドが問われている

 

6月26日の毎日新聞の第一報は、同氏を、「トランスジェンダー理事を女性と発表 JOC性自認理解不足」と報じている。

この報道に続いた各報道は、わが国における性別についての論点をあぶりだしたと言える。

わが国における法律上の性別は、「出生届の性別(指定性別)」であり原則は不変である。しかし、グローバルスタンダードによると先進国等は、自認する性により性別を医師の診断や性別移行手術を経ずに自己決定できる。

この現実に対して、同氏をはじめ著名なLGBTの当事者による活動は、自己決定による性自認をよしとし、異論を唱えると激しい反差別の活動を繰り返し、署名活動や大規模なデモを実施してきた。

また、同氏は、わが国で最大の東京プライドパレード&フェスタを主催する団体の共同代表を永年に渡り続けており、文字通り自他ともに認める男性としてLGBTの人権活動の第一線で活動を続けてきた。

日常でも友人のゲイ男性から精子提供を受け、パートナー女性が出産、同氏は父親として精子提供者とパートナーとともに3人で親として、子育てをしている様子はNHKなどを通じて広く新しい家族のあり方を示すという先進的な活動として報じられている。

そして、ほぼ同時期に、日本フェンシング協会の理事にも就任している。

報道による混乱を受けて、日本オリンピック委員会は、謝罪、訂正の文を発出した。その内容と複数の報道によると、わが国のLGBT活動のトップランナーを走ってきた同氏の理事就任にあたり、同氏は公益社団法人日本フェンシング協会理事の中から女性として推薦されることについて、協会に性別の取り扱いを委ねたという。

このねじれがあぶりだしたものは、厳しい言い方をすれば、同氏の持つプライドやジェンダーアイデンティティが何なのかという根本が問われて当然だと言える。

過去の人権活動では、知識不足からくる不注意な発言までも厳しく差別と断定し、「どれだけ多くの当事者を傷つけたか!」と激しい怒りを発言者にぶつけてきた。

ご本人の活動から見れば、今回の女性としての理事就任では、侮辱、名誉棄損に十分な状況を甘受し、平素の人権活動では、真逆の反差別の活動を続けて来た現実が分かる。

この相反する2つの事実にしっかり向かい合い国民に向け丁寧な説明をすべきであると同時に傷ついた多くの声なき当事者に真摯に謝罪をすることである。

また、LGBT当事者活動やアライの皆さんも無言ではなく、どうしていつものように強く日本オリンピック委員会日本フェンシング協会に対して差別を訴えないのだろうか?

このままでは、身内には甘く、他人には厳しいということになりかねない。ご都合主義の最たるものだ。

言うまでもなく人権は普遍である。多くの当事者活動家やアライの皆さんは、無言を続けることなく皆さんの正義を堂々と訴えて欲しい。そして多くの国民とともに差別とは何かを考える良い機会にして欲しい。

今回の一連の流れは、ご本人が認めるかどうかに関わらず、皆さんが信じるグローバルスタンダードに照らし合わせば、「差別」であり、明らかな「人権侵害」である。この事実に向かい合えない活動は真っ当な人権活動ではないと言わざるを得ないことになりかねない。

当会は、設立以来、「差別禁止」ではなく、一貫して「理解増進」を掲げて活動してきた。これは、明確な差別の定義が定められず悪意のない不注意な発言までもが差別と断じられるようなことがあれば、国民の多くに腫物扱いされ、国民の分断を起こすからである。

今回の騒動があぶりだしたことは、高々と掲げたLGBTプライドやジェンダーアイデンティティとは、何だったのかという疑念ではないだろうか?

いま、目にしているものは、間違いなく当会が掲げた理解増進の活動だ。問題を冷静に受け留め、差別主義者を切り捨てるのではなく、一致団結して叡智をもって違いを乗り越え解決していくことが肝要だ。

この際、杉山文野氏は、しっかり理解増進に舵を切って欲しい。

そして、当会とともに真のLGBT理解増進法の成立に向け尽力して欲しい。

今回の騒動が、差別禁止ではく理解増進のプライドの旗を高々と掲げ、世界が羨む課題の完全解消ができた社会を目指す、わが国のLGBT活動の分水嶺になれば、杉山文野氏の理事就任が、わが国のLGBT史に残る新たな活動の1ページになると信じている。

最後に、図らずも当会としてこのような談話を出すことについては大変遺憾に思います。

 

令和3年(2021年)6月29日

一般社団法人 LGBT理解増進会

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